私が勤める尾粂は、創業150年を超える築地(現在は豊洲)の仲卸問屋で、150年もの間、塩干品や乾物の流通に携わってきました。
だしの原料は、種類はもちろん品質のランクや産地の違いなどから、かなりのバリエーションが存在します。
私自身、バイヤーとして、数多くのだしの原料を取り扱ってきましたが、原料の組み合わせによって、その数は更に何倍にも膨らみ千差万別な「だし」が存在するなかで、お客様の様々な要望に答えて「ベストなだし」を提案できるようになりたいと思い、だしソムリエの資格取得を目指して勉強することにしました。
だしソムリエについて

尾粂(おくめ)のだしソムリエ
尾粂(おくめ)には「だしソムリエ」という資格を保有する「だしのプロフェッショナル」がいます。
だしソムリエは、「天然だし」「素材」の味を知り、料理や商品開発、メニュー開発に活かせる専門家で、日本各地の郷土料理や食文化を大切にし、だしの魅力をあらゆる切り口で語れる人材の育成を目的とした民間資格です。
尾粂に所属する「だしソムリエ」の高橋利斉に、「だしのメリット」や「料理に合うだし」などについて話を伺いました。
プロフィール
高橋 利斉(たかはし としなり)
だしソムリエの資格を取得したきっかけとは

だしソムリエになるまでの苦労
だしソムリエの資格を取得するためには、日本の乾物だけではなく、フレンチ、イタリアン、中華など世界のだしを学ぶことが必要です。
だしは日本独自の文化と思っていましたが、世界においてもだしの種類や文化は多く複雑で、これまでバイヤーとして扱ったことのない「だし原料」も多かったため、覚えて理解するのに苦労しました。
だしソムリエとしてのお仕事とは

だしソムリエを取得してからは、料理の世界で活躍するプロの料理人や流通業の方々に、だしソムリエとして「だしの提案」をさせてもらっています。
日本食のみならず、和洋中も含めて様々なジャンルでだしが扱われる他、食材や加工品の販売メーカーにおいてもだしは重要で、いろいろな用途で使われています。
尾粂が扱うだしの原料や組み合わせて作っただし商品から、顧客の要望に応えるだしの選定や、顧客のニーズを踏まえて新しい原料の開拓、新しいだしの組み合わせなど研究に時間を費やしています。
料理にだしを加えるメリット
だしを取ると、だし原料に含まれるイノシン酸やグルタミン酸、コハク酸といった旨味成分が抽出されます。
この旨味成分の相乗効果によって、料理の味に深みを加え、「おいしそう」と食欲をそそる「香り」も良くしてくれます。
だしがなくても醤油や塩、砂糖などで料理の味付けはできますが、ほんの少しの手間を加えることで、料理のクオリティは数倍に跳ね上がります。
旨味が詰まっているため、調味料の使用量を抑えることができ、過剰な塩分や糖分を接種することを避けられます。
「薄味なのに、しっかりとした味」、日本人の繊細な味覚に訴える美味しい料理をつくる「だし」は源となります。
だしの原料は数百種類、組み合わせは無限大

だし原料は、鰹節や昆布、片口イワシといった代表的な原料でも、利尻昆布や伊吹いりこといった地域によって独自ブランドがついたものがあります。
昆布は天然や養殖(促成)のものがあり、大きさや厚みによってランク分けがされているなど、細かく原料が区別されています。
「だし」と一括りで表現したとしても、原料は数百種類になりますし、組み合わせは天文学的な数になってきます。
どんな料理に、どんなだしが合うのか、だしソムリエとして探究する毎日が楽しいです。
かつおだしは万能だし
尾粂で扱う商品のなかで、最も見る代表的なだし「かつおだし」は、万能さが際立っていて、お味噌汁はもちろん、煮物、お鍋の基本だしとして特に相性がいいです。
かつおだしの中でも特上と評価される「かつお本枯れ節」を使った上品なだしは、「薄味でもしっかりとした味」を演出できますので、お吸い物や懐石料理の高級料理などで重宝されています。
だしの文化は世界でも

「だし」は日本食の文化と言えますが、海外(西洋)にもだしは存在します。
フレンチやイタリアン、中華、韓国料理でも、しっかりと旨味を引き出して凝縮させた乾物はあり、各国の料理でも味に奥行きを作るものとして「だし」の存在を感じることはよくあります。
最近では、日本のだし文化に触発されて、各国の料理人たちが、日本のだしを使った料理や、その国独自の原料をつかった「だし」作りにチャレンジしていますので、世界の食文化は「だし」による味の奥行き作りという点で、まだまだ発展する可能性があります。
美味しいだしの取り方

話は変わりますが、尾粂で扱っている「だしパック」は、どれくらいの水の量が適切か?といった質問をよく受けます。
水の量が多すぎますと、奥行きを感じない薄さになってしまいますし、少なすぎても、だしを取り切れずもったいないことになってしまいます。
以下に、美味しいだしの取り方を記しますので、尾粂のだしをお買い求めいただいた方はぜひご参考ください。
- <美味しいだしの取り方(だしパック編)>
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- 1.鍋に水とだしパックを入れて火にかけます。(沸騰させる前の水の状態からだしパックを入れます)
- 2.沸騰したら中火で2~3分ほど「煮出し」します。
- 3.火を止めて「だしパック」を取り出します。
- 【基本だし】
- …水400mlに、だしパックを1袋
- 【濃いだし】
- …水500mlに、だしパックを2袋
オーダーメイドだしの楽しみ方
最後に、尾粂をご利用いただく方、全員にチャレンジしていただきたいのが、尾粂オリジナルのサービス「オーダーメイドだし」です。
お客様のお好みで作ってもらうオーダーメイドだしは、かつおぶしや煮干しが持つイノシン酸、昆布系の原料が持つグルタミン酸、しいたけ系の原料が持つグアニル酸といった3つの旨味成分を最適なバランスで組み合わせることが大事です。
旨味の相乗効果で、味の奥行きが何十倍にも広がるからです。
オーダーメイドだし作りのコーナーでは、簡単に3つの旨味成分がバランス良く合わさるよう、ステップごとに選択式のオーダー表を用意しました。
まずは、セミオーダーでオリジナルのだしを作ってみてください。
だしの調合に慣れた強者、プロフェッショナルの方は、1g単位であらゆる原料を組みあせてオーダーできる「フルオーダーメイド」のコーナーに挑戦してみてください。
お客様の好みの味が見つかることをお祈りいたします。
わからないことがあれば、お気軽にお問い合わせください。
だしソムリエとして、美味しいだし作りをお手伝いさせていただきます。
